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色彩の下

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2021年 04月 06日

三越コンテンポラリー「dual」文章

3月1日に終了した個展「dual」の会場内にて配った文章を記載します。

dual

作品を進展させる際に、絵画の要素のある部分を2重(dual)にして、その先の制作を考える。
本展示のメインの作品「dual」(2021-01)はサイズがh2,300×w14,400×d45mmである。
これは昨年末にアートフロントギャラリー(代官山)にて発表した作品「squid」のサイズh4,600×w7,200×d45mmと面積を等しくしてある。
絵画の「面積」という要素を2つに分け、それぞれ制作を実行し、それらを別々の完成に至らせる。

現在、人々の生活は、パソコン無しには成立しない状況である。
そのため、その周辺機器の開発は凄まじい。
その発展の大きな鍵を握るのが、処理速度や記録容量だが、それらは日々倍々と増えている。
その際に使用されるのが、dualという考え方で、処理する部品を2個以上使用したり、記録する面を2層にして、その都度倍の容量や速度で記録できるようにする。

絵画を制作することは、その完成した作品を構成する1つの可能性以外のあらゆる可能性を排除する作業で、多くの選択を迫られる。
しかし、その際に失った要素にも未来があるはずで、それらのうち一つでも拾えたらその先に新たな作品の萌芽があるのでは?
という感覚で、個展に展示する作品を部分的に層にして進展させてみる。
三越コンテンポラリー「dual」文章_f0082794_15004404.jpg
no.2021-01/dual/h2300×w14400×d45mm/三越コンテンポラリー/撮影:加藤健

本展の作品「dual」はたった1点の作品ではあるが、制作や展示の兼ね合いから「18分割」されている。
そこから、18点の同一サイズの作品を構想し制作する。(2021-02~2021-19/h610×w460×d30mm)
その18点の作品は、ギャラリーの中に全て展示している。
その一部は作品の裏に展示していて見えないものもある。

作品を「展示すること」を層にすることで、文字通り、作品の前や裏にも物理的に作品を展示する。
それにより、失った展示の可能性の断片を見ることも可能かもしれない。

今回は、紳士服売り場との連動企画で、作品を数点、本館2Fの「紳士服売場」にも展示をしている。
百貨店は階層のある建物だ。
また、「2021-02」(h610×w460mm)と同サイズの作品の1点を、今回リーフレットに寄稿いただいた新宿のアートライブラリーカフェバー”A’holic”に展示した。

本展は、作品の存在の層、面積の層、比率の層、展示空間の層というように、制作している作品への焦点を隣へ隣へとズラして行くことで自分の制作の新たな立ち位置を模索する試みでもある。

2021.02 内海聖史(画家)

by uchiumiinfo | 2021-04-06 15:05 | コンセプト文章


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