2015年 10月 30日
茨城県境町より出品いたしました「ふるさと納税」の作品は、情報開示からわずかの日数でご寄附をいただき、売り切れとなりました。 早々にご寄附をいただき、また様々な関心をいただきありがとうございます。 この件につきましては少々考えたことを記載いたします。 今回このふるさと納税事業にて提示いたしました金額は300万円です。 300万円というのは言うまでもなく高額で、ギャラリーでその価格で販売してもそうそう売れる金額ではありません。 よほどのトップギャラリーでトップアーティストでないと、おいそれと動かない価格となります。 そこで、そのどちらでもない状況で、僕の制作がこの価格で成立したという事実から考えたいと思います。 「納税」という義務と同時に文化的社会的に寄与したいという方はある程度いらっしゃるのだと思います。 そのような方の受け皿にギャラリーの販売が必ずしもなっていないのではないでしょうか? 美術品に限らず物の売買は基本的には閉じた世界です。 売り手と買い手が個人間にてやり取りをするからです。 美術作品は世に問うている物が多々ありますが、それが売買のところで急に個々人のやりとりに集約されてしまうところに、美術のダイナミックなところと閉塞的なところがないまぜになっています。 購入者にとっては、世界的に開かれたものが個人のものになるという大きな物語を手に入れた感がありますが、裏を返すと、世に開かれたものが個人に閉じてしまうとも受け取れます。 これは多くの美術作品が「モノ」として存在してしまう為に起きてしまう、当たり前の、作品に内包されている事実なので、僕個人としてはとくに問題にする事ではないのですが、作品を「公共に開いたままにしておきたい」という人も居るのではないのかな?と思いました。 しかし、作品を公共に開いたままにするには、個人が購入して美術館に寄贈するというなかなか面倒な手続きを踏む必要があります。 そこに色々な障壁があるのかなと。 画像/株式会社篠原工務店応接室(茨城県境町) 2014年 撮影:加藤健 転じて昨今、大抵の美術館は収蔵費用がありません。 この状況は10年以上続いています。 日本の経済が豊かだった時代には、美術館で展覧会をすると何点かはその美術館に収蔵されてゆくという状況があったそうです。 しかし、僕が美術館での企画に参加するようになって以降、展覧会をしてその中から直接収蔵に至ったケースはありません。(展覧会をした後年に収蔵に至ったケースは有ります。) そこで、例えば美術館で展覧会をしたさいに、その中で美術館が収蔵したい作品をその地域のふるさと納税に出品し、収蔵希望作品の購入権を納税者に売るという事はできないのでしょうか? 納税者の寄附があった作品はそのまま美術館に寄贈され、寄贈者は寄贈の栄誉を得てカタログに記載されたり展覧会パスなどを得るような。映画ハーブ&ドロシーのラストのようなイメージです。 こんなことはできないのでしょうかね? ある自治体に100万円納税したことで、50%は自治体の文化事業費、50%は作家。作品は美術館、納税者は末代までの栄誉というような感じ。 同じようなイメージで、クラウドファンディング等でも同様な事は可能な気がします。 ある作品を美術館収蔵するにあたって、必要な経費を多くの人から募り、最終的に長期的な保存をする。 作家にも制作費が発生し、きちんと次の制作に向き合える。 そんなケースが出来たら良いなと考えました。 現在は地域の美術展も大変盛んです。 全てのケースを知っているわけでは無いですが、これらも作家に十分な制作費や報酬が有るとは言えません。 地域の美術展はお祭り的にその場で終了してしまうのではなく、その地域の企業や施設などに作品を購入してもらい、祭りの後にもその地域に根付くような動きがないといけないような気がするのですが、その一環としてその地域のふるさと納税に作品を出品し、作品の流通を促すような取り組みも可能ではないでしょうか? 地域展に出品時点では、規定の報酬を受け取りますが、その作品がふるさと納税に出品されて成立すれば、何%は次の文化事業に充て、何%が出品作家の報酬として制作費などに充てられるようなシステム。 この場合は、作品は納税者のものになります。 結構可能性があるような気がするのですが。。 作品の保存や作家の自立のような、文化的な下支えとしてそのような流れが生まれる事を望みます。 僕はとりあえず目の前の制作をきちんと全うしたいと思います。 前例の無い状況に出会うというのは面白いですね。
by uchiumiinfo
| 2015-10-30 00:00
|
アバウト
カレンダー
カテゴリ
検索
お問い合わせ
お問い合わせ
uchiumisatoshi2@hotmail.co.jp メールアドレスはコピーしてご使用下さい。 ホームページ作成いたしました。 http://uchiumisatoshi.com/ 現在の展示予定 個展 2024年12月予定 2026年6月予定 グループ展 ー 虎ノ門ヒルズにて作品を設置いたしました。 虎ノ門ヒルズ/アーティストページ 資生堂ギャラリー ギャラリエアンドウ アートフロントギャラリー void+ eN arts 以前の記事
2024年 01月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 05月 2023年 04月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 02月 2021年 12月 2021年 09月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 02月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 03月 2020年 02月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 09月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 03月 2019年 01月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 04月 2015年 03月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 06月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 ブログパーツ
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||