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色彩の下

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2016年 09月 25日

「納税と寄附と価値と美術」

昨年も作品を提供させていただきました、茨城県境町のふるさと納税に今年も作品提供させていただきます。

昨年2015年は、まだ現代美術の作家で作品自体を出品している方がいませんでした。
それなので、現在生きる作家が町に居るという特性を活かして、既存の作品ではなくこれから生まれる作品をという事で300万円のコミッションワーク(依頼制作)を提供いたしました。
その作品は、川崎市の「久世歯科医院」さんの待合室に設置されています。

制作方法としては、事前に久世歯科医院さんに伺い、待合室を計測、撮影などして状況をつかみ作品を制作いたしました。
約半年の制作期間にて完成しています。
「納税と寄附と価値と美術」_f0082794_402734.jpg

久世歯科医院設置風景 2016年 油彩、水彩、麻カンバス、パネル  制作:内海聖史 撮影:加藤健 

僕自身には美術家としての好奇心があり、それは自分が出会っていない事へのフロンティアスピリッツのような物なのですが、当初「ふるさと納税」というお金、それも税金という国や行政が色濃くからむ場所へ自分の制作を近づける事にとても抵抗がありました。
しかし、他の作家が侵入していない未開の地である事への興味もあり踏み込んだ所、無事に作品を納める事ができて良い制作をする事ができました。
それがあっての今年。再度の提供をする機会をいただいた際に、昨年と同じだとそのフロンティアスピリッツに欠けるので何か自分でも心が揺らぐような企画が思いつかないかと計画したのが、以下の「納税と寄附と価値と美術」という作品です。

いままで、個展、展覧会、コミッションワークと数多くの作品を手掛けさせていただいております。
そこで生まれる報酬というのは当然様々なのですが、基本的に一貫しているのは報酬の大小によって作品の質は変わらないという事です。
価格に見合わせて造るというよりは、納得のゆく作品を造る事の繰り返しなので、価格に質は左右されない制作となります。
そうなると、当然作品の価格が安い方が購入する側としては得になるのですが、僕自身の作品は世にあるいろいろな絵画作品に比べてもかなり制作費がかかるタイプなので、ある程度の価格を維持しないと最低限の質を保つ事が難しくなります。
逆に、価格を上げて購入いただくと、その案件に対して出来る可能性が大きく高まります。
サイズや数、形など、こだわれる箇所が増えるので、様々なアイデアや可能性を精査することが出来ます。
普段仕事を請け負う際には、ある程度予算が決まっているのでそれを越えてアイデアを実現する場合は自分の利益を減らしながら遂行するしかないのですが、ふるさと納税では先にコミッションワーク(依頼制作)の形をとりながら、価格提示が出来るという珍しい形態にする事が可能だと考え、この度300万円から1000万円まで、100万円単位で8段階の作品を提示させていただく事にいたしました。
とても実験的な企画なので、賛同していただける方がいると面白いのですが、無謀だとも思っています。
以下内容。

①作品の価格
300万円から1000万円まで8点出品いたします。
300万円400万円500万円600万円700万円800万円900万円1000万円)
作品は状況によって変わるので、どれが良い作品かと言うことはありません。
どれも良い作品と良い制作の経験になるよう努力します。
尚、使用画像と実際制作する作品とは全く関係が無いです。

②作品サイズ
どの作品もh2,500mm×w3,000mm程度としていますが、これは通常の室内の壁1枚程度という感覚で記載しています。
状況に見合って制作をするので、これよりも大きくなる可能性も、小さくなる可能性も、数点に分かれる可能性もあります。
「ベストを探す」という事だけが決まっています。
ご質問だけでも受け付けますので、気になる事がございましたらご相談下さい。

③制作期間
12ヶ月をいただいていますが、内容によってマチマチとしか言いようがありません。
現時点でも多くの制作と展覧会のご依頼をいただいていますので、状況次第です。
通常、個展では1年以上の準備期間をもって制作しています。
焦って描くとお互いに良い結果になりませんので、ご了承下さい。

④作品仕様
木製パネル、麻カンバス、油彩絵具、水彩絵具

⑤作品設置
基本的には設置や額装は購入者の負担となります。
地元の工務店などを利用して設置する事になるかと思います。
業者さんを決定していただけましたら、設置内容などの打ち合わせをいたします。
設置業者をご案内することも可能です。

⑥作品撮影
作品設置後、プロのカメラマンによる作品撮影をいたします。
撮影した画像は購入者に差し上げます。
また画像はホームページやカタログ作成等に使用いたします。
何か形に残せると良いなと思っています。

この企画自体は2年ほどで終了いたします。
2018年12月くらいで区切りをつけます。
  ※2019年現在、画像変更等経て続行中です。
この無謀な企画に乗ってくる方がいらしたら、世界は面白いなと思っています。

※納税額が提供している作品の額と合わない場合も、寄付額のうちで寄付者が納税可能な額のみ納税として扱う事ができるそうなので、作品を納税額分割引で手に入れるという事も可能なようです。
また、法人の納税でも寄附できるようなので、会社等でもご一考ください。
不明な点は納税課にお問い合わせください。

「納税と寄附と価値と美術」という企画について。
ふるさと納税の返礼品に関わらせていただく事によって、このふるさと納税という場は貨幣の価値が少々特殊だと感じました。
欲しい物を購入(寄附)して手に入れるという一般的な市場の流通以外にも、その土地への思い入れによって寄附したり、今年は熊本が顕著ですが被災地に対して応援の意味で寄附したり、もちろん節税的な意味での寄附もあります。
それは、返礼品を出す出品者にも言えて、通常の市場とはまた違う、こちらも応援の意味を込めて出品している物も多く見受けられます。
このような、価値の揺らぎは美術の内部でも多く見受けられるところで、美術作品の価値というのも美術市場での価値。流行、嗜好、文化支援、個人的応援、歴史的背景、ステータス等さまざまな要因を加味して形成されています。
昨年度作品を制作納品したことで、僕が得た対価は果たして何だったのでしょうか?
税なのか、寄附なのか、作品の価値なのか?
ということで、「納税と寄附と価値と美術」というタイトルにて本年度の作品を提示させていただきます。

今企画を立ち上げるにあたって、境町の橋本正裕町長とまちづくり推進課の方々のご理解をいただきました。
ありがとうございました。
また、本企画は茨城県北芸術祭2016の応援事業となっています。

この企画の内容は制度の変更などに伴い、今後も改稿するかなと思います。
わからない事がありましたら、随時ご連絡ください。
2016.09.25 内海聖史

by uchiumiinfo | 2016-09-25 00:00 | コンセプト文章


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