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色彩の下

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2015年 10月 24日

ふるさと納税

ふるさと納税の記念品として、僕の制作を出品いたしました。
以下概要と考えた事を記載いたします。

今年度、僕の産まれた町、茨城県境町のふるさと納税記念品として、僕の作品が出品されています。
現代美術にカテゴライズされる絵画がふるさと納税の記念品になる事は、かなり珍しい事だと思います。

以下、制作様式です。
合併60周年記念 特別企画”内海聖史”絵画プラン
・境町は境町にゆかりのあるクリエイターを応援いたします。
・境町出身・在住で,若手現代アーティストとして活躍され,子供たちへのワークショップ等も精力的に行っています。色鮮やかな点描を重ねた多様なスケールで絵画の可能性を探る作品です。
・東京都現代美術館,茨城県近代美術館,虎の門ヒルズ等展覧会,設置事例多数。

①制作には約6ヶ月をいただきます。
②サイズは,高さ約1300mm×2,500mm程度で,配置する空間に合わせて作成いたします。(額装,設置費用は別途承ります。遠隔地につきましては,送料等ご相談させていただくことがあります。(北海道,沖縄,離島,海外など))
③仕様:木製パネル,麻カンバス,油彩絵具,水彩絵具
④作品紹介はこちら http://uchiumisatoshi.com/
全てが決定してから制作する方式なので、もし決定しても6ヶ月ほどお時間をいただく事になるかと思います。
ふるさと納税_f0082794_11402115.jpg

画像/なかりせば 2011年制作 「作家派遣授業報告展」茨城県近代美術館 撮影:加藤健

●「絵画」のあり方について
今回このようなご提案を町からいただき、出品する事について大変悩みましたが、お引き受けする事にいたしました。
現在、国内にて「絵画」が存在出来る場所は何処なのか?と考えています。
最も場がありそうな美術館や国際展では「絵画」の席が必ずしも多くはありません。
強く拒絶されているのでは?と感じる程です。
その少ない絵画のある場面でも、絵画内でのモードや社会との理解によって全てが網羅されるわけではありません。
具象的な絵画、私小説的な絵画、抽象的な絵画、コンセプチュアルな絵画・・・と絵画の中でも多様な表現があり、それらは今なお現役で激しく変遷を遂げていると思います。
しかし、それらは大きな発表の場が無い事で、あまり広く世間に問えていない現状はあるかと思います。(ギャラリーや個々人のレベルでは今でも絵画が最も盛んな表現だとは思います。)

近年ありがたい事に、コミッションワークと呼ばれる、企業や建築の公共的な場所に作品を設置する事例を多く手がけさせていただきました。
その際のご意見や受け入れられ方をみるに、もしかしたら絵画という表現は美術館などで「珍しい表現」として紹介されるという位置からある一定の共通理解として社会に浸透している表現という位置へと移行していると仮定できるのではないかと感じています。

元々日本は家屋に床の間を有し、ふすま絵、つい立て、欄間と表現を日常に配する文化をおくってきました。
ふるさと納税のサイト「ふるさとチョイス」にて絵画や美術を検索すると、花の絵や壷、版画、風景画などが確認出来ます。※時期によっていろいろ変わっています。
僕の制作するような表現が、それらの作品のような日常への浸透への皮切りになるとしたら、それはとても面白いのかなと思っています。


●町がふるさと納税記念品を選択する事について
僕の作品をふるさと納税の対象にしていただいた、茨城県境町は関東平野の中心に位置します。
おそらく県境にあるので境町なのだろうと思います。
県境は川で区切られる事が多く、利根川、江戸川、渡良瀬川などが密集している地域という事もあり、電車などの公共交通が発達しておらず、今年ようやく高速圏央道の出入り口「境古河インターチチェンジ」が完成いたしましたが関東平野内でもかなり行きにくい地域となります。
茨城県の県西地区に位置し、美術館など文化施設も少ない地域となります。
よって、地域の文化イベントなどにも乏しいのですが、ふるさと納税はそのような地域でも「文化的な意識がある」と提言する場としても使えるのではないかと感じました。
ふるさと納税の記念品は、その町の紹介という側面をはらんでいます。
農耕地域は米や野菜、酪農地域は肉を中心に記念品を選択し、それはその地域の自己紹介の様相を呈しています。
しかし、境町は何か圧倒的に有名な特産物や名所があるわけではありません。
さしま茶とかレタスが特産ですが、知らないですよね。。
そんな中、その町の眼が何に向いているかを公に差し示す場としてふるさと納税の記念品の選択は活用できるかもしれません。
ふるさと納税記念品を探すサイト「ふるさとチョイス」という名は「どのふるさとの品をチョイスするか?」という意味とともに、「そのふるさとは何をチョイスしているのか?」も見定める事が出来るという事になります。
そこで、僕のような現代美術、抽象表現というように判別される作品を町が選択する事は、「町に文化的意識がある」というメッセージともとれるのではないかと思いました。
例えばアート県をうたっている香川県でも、美術品の出品はありませんし、窯どころの地域が焼き物を出品するのともまた違った意味合いがあるかと思います。
昨今、地域のアートイベントなどが盛んですが、それらの実現には大変多くの時間と労力と資本が必要となります。
しかし、このふるさとチョイスの選択は、特に何も資本はいらず、その地域地域で特色のある事業や人材を探し出す眼がその自治体にあれば良いだけなのでとても安価で面白い提案だと感じました。
実際300万円となかなか高価な案件ですが、記念品交換の契約がされてもされなくても町の意思をアピール出来た事にはかわらないし、大変考えさせられる案件だと思い、一応考えを記載いたしました。
絵画を制作する事が、自分をいろいろな所に連れて行くなぁと感じています。
内海聖史

by uchiumiinfo | 2015-10-24 00:00


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